プロローグ
With Moviesは、アラサー女子が運営する、女子のためのモチベーションが上がる映画の紹介を基本としていますが、世の中の話題作を見逃すわけにはいきません。女性が夢中で好きになる映画は、女性が主役であり、女子っぽい世界観で送られる映画でしょう。しかし、そのジャンルの映画が好きな女性たちも、ひとたびその枠から出てみることで、図らずも自分の心が整理されることもあるものです。いつも観ているジャンルから外れて映画を観てみよう、そう思った女性にお届けしたい作品を選んでみようと思います。このコラムでは、心に栄養を届けてくれる非女子ジャンルだけど”イイ”映画をお届けいたします。
【フォレスト・ガンプ】を勧めたい理由①”フォレスト・ガンプ”に惹き込まれる
題名の【フォレスト・ガンプ】は主人公の名前で、それに気づくまでにあまり時間はかかりません。そして最終的には彼の名前”フォレスト・ガンプ”が、この作品の題名であることに納得すぎるほど、これはまさに彼の物語で、彼を愛さずにはいられなくなる映画でした。しかし、フォレストがバス停のベンチでバスを待っている間に、たまたま隣に腰掛けている人に向かって自分の生い立ちを語るスタイルに、初めは戸惑いを感じました。一番最初に腰掛けた女性は興味がほとんどなさそうで、フォレストのことをちょっと変な人と感じている雰囲気すらありました。それはその女性に限らず、正直私自身も同じでした。
しかし、バスが来てその女性が去ろうとも、隣に座る人が別の人に変わろうとも、気にせずに自分の生い立ちを屈託なく話続けるフォレストの話に、いつしか前のめりになって聞いている自分がいるのです。ベンチに座った人たちが少しずつ話に相槌を打ったり、質問をしたりするようになったように、観ている私たちをもフォレストの人柄とその人生に心惹かれていくのです。その過程が、実際に人を好きになっていくような穏やかな気持ちの変化で、それがとても心地よいのです。1人の人に魅せられその人生に興味を持つ一連の心地よい感覚を味わえる稀有な映画と言えるでしょう。
【フォレスト・ガンプ】を勧めたい理由②人生との向き合い方を教えてくれる
フォレストは、生きることにかけて天才でした。自分の身に起きる一般的には不利と捉えられていることでさえも、人生に活かして生きているのです。それはきっとフォレスト自身が”不利”と捉えていなかったからなのでしょう。彼にとっては、ただ、生きているだけなのです。彼が、彼の人生に起きたことをそのまま愚直に取り組んだことで道が開けた事柄はたくさんあります。
・IQが低いために彼のことをいじめるいじめっこたちから逃げるために走ることを始めた結果、走る才能で大学に進学。
・大学の卒業式でパンフレットを配っていた軍人から入隊の案内をもらったから軍に入隊したら、意外と性に合っていた。
・軍でたまたまよくしてくれた人がエビ好きだったから、エビの漁を始めたら成功した。
・仲間に勧められて卓球を始めたらすごい選手になった。
・走りたくなって走り始めたら注目の的になり話題の人になった。
彼は、彼の人生にどんなことをが起こっても、ただ前を向いて生きることを考えているのでしょう。自分の人生ああでもないこうでもないと、ないものをねだることもせずくよくよ悩みもせず、ただ自分の目の前のことをこなし、誰かとの約束を守り、愚直に継続することで、彼は自分の人生を立派に生きることができたのです。ついついいろいろなものに目移りしたり、より良いものを求めすぎてしまうところですが、実際は目の前のものに素直に向き合うことで、それだけで人生は創れてしまうものなのだと感服させられます。
【フォレスト・ガンプ】を勧めたい理由③爽やかに観ることができる
非女子ジャンルに取り組む際にネックになるのは、女子ジャンル好きには重たい雰囲気ではないでしょうか?女子向けとされるものは、明るく楽しくモチベーションが上がる作品が多く、あまり深刻なテーマを扱うものは少ない傾向にあります。【フォレスト・ガンプ】が、非女子ジャンルでありながらも、女子にも観て欲しい、女子にも見やすいと思える点は、作品の爽やかさにあります。戦場の多少重い雰囲気の状況もありますが、基本的にはたどたどしいフォレストの語りと、爽やかな音楽と素直なフォレストの目線からの描写が、物事をより真っ直ぐに見せてくれます。フォレストに清潔感があり、何事にも真っ直ぐな人柄が素敵で魅力的な主人公であることも、爽やかに観られるポイントでしょう。
【フォレスト・ガンプ】を勧めたい理由④構成が秀逸で映画好きなら誰でも惚れる
非女子ジャンルを普段観ている人も、映画好きには変わりないでしょう。【フォレスト・ガンプ】はどんな性別・年代でも映画好きであれば見惚れてしまう物語構成となっています。”映画”として完成度がとても高い作品なんです。映画の構成を言葉で表すとこうなります。
物語は現在のフォレストが、バス停のベンチに座って舞い降りる羽を拾いあげるとことから始まります。その後、どうして自分がこのバス停でバスを待っているのかを説明するために、自分の人生の話をはじめから語り始め、私たちとたまたまバス停に居合わせた人々は回想シーンとそれに合わせたフォレストの語りで、フォレストの生きた人生を知っていくのです。バス停ですからバスを待つ人たちはバスがくれば居なくなり、また別の人が座り、耳を傾けていきます。そして最終的に結論にたどり着いた時、隣のおばあさんがバスに乗る必要はないと教えてくれ、その後目的地に辿り着き、フォレストは新しい人生の”向き合うべきこと”を見つけ、初めのシーンでバス停から拾い上げた羽が、フォレストのもとを離れてまた空中に漂い舞い上がっていくのです。
はじまりと終わりのリンク感、観ている側の私たちもベンチに居合わせているかのような(だとしたら相当バスを逃している)親近感、”何故いまここのベンチに座っているのか”という簡単な答えを話すのに一生を語ることで、観ている者(聞いている者)を一気にフォレストの過去に連れていき、あっという間に現在のフォレストと同じ感覚でベンチに座っているかのように足並みを整えてしまう秀逸すぎる場面構成が、観終わったときに心地よい感覚を授けてくれるはずです。
【フォレスト・ガンプ】を勧めたい理由⑤トム・ハンクスの汎用性に驚愕する
人に対して、しかも名俳優に対して、汎用性という言葉が適しているかはさておき、しかしながらそう言わざるを得ないほどに様々な役にピタリとハマり続けるトム・ハンクスには驚きしかありません。【フォレスト・ガンプ】で見せたトム・ハンクスは、無垢で純粋で愚直で・・・と色で例えるならばちょっと透け感のあるほどのホワイトな役柄です。なんの混ざり気も雑念もなく、ただ目の前に起きていることに対応し続けながら生きるフォレストを、あれだけ魅力的な人物に仕上げたのはトムの偉業と言えるでしょう。
女子が大好きなラブストーリーでいえば、メグ・ライアンと共演した1993年の【めぐり逢えたら】(洋画【めぐり逢えたら】王道ラブストーリーでほっこりしたいときにうってつけの映画)や、同じくメグとの共演作品である1998年の【ユー・ガット・メール】、2011年にジュリア・ロバーツと共演した【幸せの教室】などで、不器用だけどイイ男を演じています。そうかと思えば、2016年【インフェルノ】や2006年【ダ・ヴィンチ・コード】などでミステリー作品、2016年【ハドソン川の奇跡】、2017年【ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書】などでは実話の作品にも出演しており、彼の高い汎用性には誰も異議を唱えることができないほどに素晴らしい俳優ですよね。【フォレスト・ガンプ】を観たら、きっと他のトム・ハンクス映画を追いたくなるはずです。
エピローグ
頑張る女性が次第に成長していくシンデレラストーリーや、憧れるビジュアルの女性が主人公の映画が、ビジュアル的な面で自分の人生の目標や理想のイメージにしやすいとすれば、【フォレスト・ガンプ】は内面的な面で私たちを導いてくれる”イイ”映画です。老若男女関係なく、全ての生きる人たちにとって、目の前のものだけで満足しながら生きていくのは難しいことです。フォレストのように、置かれた状況を不幸とは思わず、置かれた状況で目の前のことを一生懸命にこなして生きる愚直さは、どんな人間にも勉強になること間違いないというところで、【フォレスト・ガンプ】はいつもは女子向け映画を好む女性にもオススメしたい映画です。
kato
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