Woman’s おすすめポイント
撮影場所はコネチカット州で、ニューヨークにほど近いところですが、どこかレトロでカントリーな雰囲気が流れる場所です。映画上で観る限りボートが複数並ぶ波止場もあり、リゾートのような雰囲気も漂う綺麗なところです。(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%80%E9%AB%98%E3%81%AE%E4%BA%BA%E7%94%9F%E3%81%AE%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8A%E6%96%B9)お洒落なジャズを歌うダイアン・キートン演じるリアの曲も、しっとりと大人な雰囲気が出ていて心が安らぎます。目にも耳にも優しい癒しに溢れた映像で癒されます。歳をとっても魅力的なダイアン・キートンは、女性たちに希望とやる気を出させてくれること間違いなし。『こんな女性になりたい』と明日からまた頑張れます。物語の起伏は激しくはないですが、マイケル・ダグラス演じるオーレンの気持ちの機微な変化に、静かに泣ける優しい映画です。
じわ~と心に沁みて気づけばほろりと涙が流れているかも
愛というもの全てにおいて不器用な男オーレンは、堅物で周りのほとんどの人間に嫌われている嫌われ者でした。彼は不動産を営んでおり、自分の家を売るシーンから始まります。その家は妻が病気で死ぬまで、息子と3人で暮らした家でした。ただ、相場となる値段とは桁違いの値段をつけているあたり、本当は売りたいように見えないオーレンでした。表向きは高く売ったお金で自由に老後を暮らしたい、と皆には言いますが、本当のところではどこか迷っているような。そして表向きは「愛情なんて」と言っているオーレンこそ、愛に飢えていたように思えます。
そんなオーレンを助けるのが、リアです。リアは済んでいるアパートの誰からも好かれ、慕われる年配の女性です。リアは、そんなオーレンに対してさえも持前の愛情を注ぎます。愛を注がれた男オーレンは、次第にリアと親しくなり、さらには様々な”愛”に気づき立ち会うことになるのです。そうして自分から愛を伝えられるようになるまでの姿は、大の大人の男が実は一番弱くて、手助けが必要な相手であるように思わせます。一番強そうに見える人ほど、弱くて脆いのです。そんなオーレンが愛に囲まれていく姿は、じんわりと心が温まり、じーんとしてしまいます。
受け身のように見えてリードする大人の女 ダイアン・キートン
ダイアン・キートンが演じる役はいつも、物腰が柔らかく、寛大で、それでいて自立した女性です。今回の役リアも、『ラウンジ歌手になりたい』とい夢を叶えるべく、既にその道を進んでいます。夫が死んでからも、ふさぎ込み過ぎず、また自分のやりたいことに挑戦しているのです。見た目についても同様です。柔らかな女性らしさもありながら、自分の歳に抗い過ぎず、それでいて自分好みのテイストを上手く取り入れています。ダイアンのトレードマークの眼鏡も、コンタクトなど眼鏡をかけない選択しもあったでしょうが、眼鏡の選択をしたことで、よりダイアンの良さが引き立っているように感じられます。
リアは、まさにそんなダイアンそのままの役柄と言っても過言ではないでしょう。リアは、いつも二言も三言も余計なオーレンに対してさえも愛情をもって、柔らかく優しい言葉を投げかけてあげます。そして、オーレンの余計な一言へも、憤慨すものの受け入れたり言い返すことができます。この「言い返すことができる」こと、これが男性にとって居心地の良い空間を作のではないかと思うのです。売り言葉に買い言葉で、つい言ってしまった言葉を、ねちねちと根に持たれるよりも、言い返されることでかえって、安心して発言したりその人の側にいることができたりするものです。そして、相手に合わせすぎないこともリアの素晴らしい魅力の1つです。オーレンにあまりに感情移入しすぎてしまえば、この物語はなりたちません。しかし、オーレンに対して思ったことを口にできる自立した女性であるからこそ、リアはオーレンを救い、そして自分の側に居させることができています。リアは、受け身に見えて、きちんと自立している、私たちが目指すべき女性像なのです。
ダイアン・キートン演じるリアのファッションにも注目!
ダイアンの『若作りしているわけではないけれど、年老いて見えすぎない』シックでエレガントなスタイリングは真似したいセンスです。
- 白いシャツに深いブルーの花柄フレアスカートに黒の太ベルトと黒のヒール
- 白地に淡いクリーム色のストライプシャツにライトブラウンのカーディガンに黒のワイドパンツ
- 白のロングカットソーに太いベージュのベルト、ワイドな黒パンツ
- 白地に黒のボーダーのカットソーに紺のバンダナを首に巻き、白の9分丈パンツにスリッポン
- 白地に黒ドットのシャツ、ジーンズに黒の細ベルト、白に黒ベルト付きハットにスリッポン
- 白のビッグシルエットシャツに黒のレギンス
- 白のシャツに白の9分丈パンツに黒の細ベルト首に茶色地に白ドットのスカーフ時々ブルーのカーディガン
- 白Vネックカットソーにベージュのチノパン、首には真珠のネックレス
- 白のシャツにグレーのストライプパンツに黒の細ベルト
- 白Tの上に白のジャケットを着て白とグレーの柔らかいストールを巻き、ボトムは黒のワイドパンツに時々白のハット
- ラウンドネック白Tにクリーム色のロング丈Vネックニットに白の9分パンツ
- 黒のシャツに黒のラメ付きバックルの付いた太ベルトに白地に大きな黒ドットが規則正しく並んだ大胆柄のフレアスカートに黒ストッキング、ストラップ付黒のヒール
- ライトブラウンのVネックニットにボルドー地に白ドットのスカーフに黒スキニーパンツ
- 首元が詰まったデザインの白のシャツのボタンを上まで閉めて、黒のワイドパンツに黒ベルトに黒ヒール
- 黒地に黒ドットのペプラムトップスに黒のタイトスカート、黒ストッキングに黒ヒール
これらが作品の中でダイアンが着た洋服です。白シャツややベルト、首に巻くスカーフなど、小物や使いまわしのしやすいアイテムで、お洒落に着まわしているのが特徴的です。自分に似合うお洒落を知っているって、とても心強いことですね。
大人の第2の恋愛を楽しく描いた作品
オーレンは癌の妻を2年間ほど懸命に看病した挙句亡くし、リアも夫を亡くしてそれぞれ1人生きています。オーレンは、きっとその辛かった2年間や妻を亡くした悲しみから、だいぶ偏屈で嫌われ者になってしまっていましたし、リアも夫との思い出の歌を歌う度に泣きじゃくる状態でした。そんな2人がゆっくりとお互いを知り、お互いのパートナーへの愛情を知ることで、近しい存在になってゆく過程は、若者たちの恋愛とは違った奥深さがありました。
第2の恋は、なかなか始められるものではないでしょう。長年連れ添った妻や夫への思いもあれば、若い頃のように燃え上がる、という感じでもない2人にとって、最初はなんとなく寂しい2人が寄り添ったという感じでした。しかし、意外とラブロマンスを大切にしているリアの感受性の豊かさや、女性の扱い方が未だ分かっていないオーレンのたじろぐ姿は、ティーンエージャーとなんら変わりないとすら思えてきます。見た目は完全に”大人な恋愛”ですが、第2の恋に進む2人の手探りな感じは初恋さながらの、初々しいかわいらしさがありました。
お洒落な曲に癒される
映画の始まり方は、その映画の全てを物語っていると言っても過言ではないでしょう。事実、【最高の人生のつくり方】の冒頭の挿入歌と景色のタッグは、その後に続くストーリーイメージに合致しています。ポジティブで綺麗な物語にピッタリだったその曲は、ジュディ・コリンズのBoth Sides Nowでした。特徴的なバックミュージックはなんとなく爽やかな夏をイメージさせ、ジュディの歌声は緩やかに響き優しい気持ちにしてくれます。その次のThe Allman Brothers BandのRamllin’ Manは、車を走らせるオーレンの場面で流れますが、まさにドライブにピッタリです。
そしてこの映画の曲はこちらだけではありません。リアが歌うチェット・ベイカーのIt Could Happen To You、Irving BerlinのCheek To Cheek、R.ロジャーズとL.ハートのBlue Moon、Shirley Eikhardのsomething to talk about、ジョニー・メンデルとポール・ウェブスターのThe Shadow of Your Smileも素晴らしいムードで良いものでした。ダイアンの歌のうまさにもびっくりする映画と言えるでしょう。他にもオーレンが孫娘の母親を調べ上げた後のドライブでは、ウィルバート・ハリソンのLet’s Work Together、オーレンが出産に立ち会う直前のドライブで流れるザ・バンドのUp On Cripple Creekなど、様々な名曲のジャズバージョンを聴くことができます。
Woman’s おまけポイント
【最高の人生のつくり方】この映画は、オーレンが堅物から抜け出せるまでの変化を楽しめる映画でもありながら、女性目線だとリアの女性としての生き方、センス、ライフスタイルを譲り受けることができる映画でもありました。老齢になってきたリアが主人公ですが、そのリアの若い頃の葛藤や悩みなどを知るシーンもあり、思わず見入ってしまうのは、まさにリアが悩んだ子育て世代の30代なのかもしれません。今の悩み、これからの不安、そしてその先の希望。全てを知っているリアの生き方を観ることで、今の暮らしを頑張る意欲が生まれるのではないでしょうか。そして、もちろんオーレンが柔らかくなっていく姿に、やっぱり愛の力は素晴らしいと再認識するのです。
kato
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