Woman’s おすすめポイント
「暮らしていくこと」というのは、あまりに日常的で当たり前のことであるが故に、時としてつまらない題材であるように捉えられることがあります。そのため、主人公の暮らしぶりがそのまま映画になったような物語の構成は、面白い作品とそうでない作品を分けがちです。「旅行先で家を買い住む」設定は、日常でもあり、非日常でもあり、そのために日常の中に見出す非日常感、そして反対に非日常の中にある日常に気がつくことができます。【トスカーナの休日】は、離婚した女性の再出発を描いており、人生において必要な考え方を説く名言や名シーンがあるのが特徴的で、また、その舞台となるイタリアの雰囲気が、程よくバカンス要素となって、素敵な作品に仕上がっています。
観光気分で楽しめるポイント①観光名所やイタリアの美しい街並みが見られる!
【トスカーナの休日】の醍醐味の1つであるのが、その素晴らしい景色です。作品の題名にもなっているトスカーナは、イタリア半島の中西部に位置している州の名前で、この州には州都であり、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂などで有名なフィレンツェ、ピサの斜塔で有名なピサ、カンポ広場やシエナ大聖堂などの数々の歴史的建造物で有名なシエーナなど、歴史的にも視覚的にも素晴らしい場所が多くあります。(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%8A%E5%B7%9E)
【トスカーナの休日】では、様々な名所が出てきます。ダイアン・レイン演じるフランシスが参加したイタリアツアーでは、アレッツォのコルトーナ村のロマネスク様式の建物など、歴史的な建造物や街並みが印象的でしたし、シャンデリアの部品を買いにローマに出かけるシーンでは、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂が堂々と画面いっぱいに映し出されます。(参照:https://www.travel.co.jp/guide/article/31263/)フランシスが、ラウル・ボヴァ演じるマルチェッロの住む街ポジターノに行くシーンでは、世界遺産に登録されるほどの美しいアマルフィ海岸が見事です。(参照:https://www.travel.co.jp/guide/article/20595/)
観光気分で楽しめるポイント②随所の食事のシーンで、イタリアの暮らしをつまみ食いできる!
フランシスが、イタリアのコルトーナで買った家を改装・改修していく中で、ポーランド人の大工たちを雇います。そして、初めは彼らとの間に溝を感じるのですが、次第に食事をふるまうなどして仲良くなっていきます。その、フランシスが作る料理が素晴らしいのです。パスタや、サラダ、ピザ、プディング、テリーヌそしてしまいにはローストビーフのような、豪華なディッシュまで作り上げます。途中から、彼らとともに食事する時間を心から楽しみ始めたのか、メニューボードまで作り、カフェさながらに演出するフランシスは、とても生き生きしていました。食事のシーンはフランシスが大工に振舞うシーンだけでなく、フランシスが買った家のもとの持ち主である、おばあちゃんがいるプラチドの家で食事をするシーンや、マルチェッロの家族との食事のシーンなど、イタリアでは食事を大いに楽しんでいることが明確です。
食事をするテーブルには、色とりどりに飾られたお皿や、カラフルな布巾や、色鮮やかな花を飾り、とても華やかにしているのはもちろんのこと、皆が楽しそうに食事を囲み会話をしたり、時に今読んでいる本の読み聞かせをしたりと、「誰か」と過ごす時間を大切にしています。離婚という人生で最大の悲しみを経験したにも関わらず、フランシスが前向きに生きることができたのは、この食事のおかげでもあるのでしょう。ただ“食べる”だけが食事ではないのです。人との関わりを大切にし、準備や盛り付けを楽しみながら過ごす食事は、人間にとって大切なことであるということを、イタリアが教えてくれます。
名言に励まされる①幸せは探すのではなく見つかるもの
「昔何時間もてんとう虫を探してそのまま草むらで眠り込んだわ。目が覚めると体中にてんとう虫が。」
【トスカーナの休日】キャサリンの言葉 日本語字幕より
リンジー・ダンカン演じるキャサリンが、フランシスを激励するシーンでの言葉ですが、フランシスは結局この言葉を実践することで幸せへの道を切り開いていきます。この言葉の意味は、てんとう虫を「幸せ」に例えるならば、『欲しいモノは、目の前のことに夢中で取り組めば、いつの間にか手に入っている』ということなのでしょう。幸せは、意外と探している最中には見つからなかったのに、探すのを止めて、目の前のことに一生懸命になったら、探さなくてもそこにあることが分かる、この言葉の意味には驚くほどに納得させられるのではないでしょうか。
名言に励まされる②考え方の角度次第で幸せに
オーストリアとイタリアの間にセンメリング峠がある アルプス山中の険しい峠に ウィーンとベニスを結ぶ鉄道が敷かれた 列車が走る ずっと前に線路が作られたんです いつか列車が通るのを信じて
【トスカーナの休日】マティーニがフランシスを励ますためにしたお話 日本語字幕より
フランシスが、家に出た蛇に驚いても近くに頼れる恋人もいない自分を見て、イタリアの大きな家に自分が独りぼっちであることを痛感し始めた時、蛇退治に駆け付けたヴィンセント・リオッタ演じるマティーニが、フランシスを励ますお話をする場面での言葉です。「何故自分はこんなところに家を買ってしまったんだろう」という思いに苛まれているフランシスにとって、「これから来る幸せに備えて家を買ったんだ」そう思える一言であったに違いありません。過去への後悔や未練を、未来を信じる力に変える不思議な言葉です。
名言に励まされる③目の前のことに夢中になることで幸せに
後悔は時間の無駄 過去は現在を殺す
【トスカーナの休日】キャサリンがフランシスに生き方を説くシーン 日本語字幕より
マティーニの名言と似たようなことを、キャサリンも言っています。マティーニの言葉が、過去への未練や後悔を、別の角度から捉えることを促す言葉だとすれば、キャサリンの言葉はもっとストレートなものでした。マティーニの線路の話然り、キャサリンのストレートな助言に然り、言いたいことは前向きに目の前の事に一生懸命生きること。イタリアでの暮らしにどっぷり浸かれないでいるフランシスに、住処と食事という、「暮らし」そのものに力を注ぐように説く2人の言葉は、悩みがある人にとって、考えさせられる言葉となるはずです。
また、【トスカーナの休日】でのキャサリンは、自由の代名詞みたいな存在で、“フェフェ(フェデリコ・フェリーニ)”という映画監督からの教えに忠実な、子ども心を忘れていない大人です。子どもは次から次へと興味を移し、常に目の前のことに全力です。いろいろなことを卒なくこなしたい大人にとって、目の前のことに全力を注ぐことは、時にとても難しいことでもありますが、その重要性を説く彼女は、主人公フランシスとはほぼ真逆の存在であり、【トスカーナの休日】を象徴するキャラクターです。
Woman’s おまけポイント
この映画の見どころは、観光気分を味わえるほどの素晴らしい景色と、イタリアの暮らしを大切にする生き方が羨ましくなるシーンだけではありません。ダイアン・レインは、正統派のアメリカンビューティーであり、イタリア人男性をメロメロにするだけでなくスクリーンに華を添える素敵な女性です。そしてまた、そのお相手役であるラウル・ボヴァは、元水泳選手であったということもあり、肉体美も言うことなしな、甘いマスクを持つイタリアンハンサムです。ラウルの見た目や口説き方に惚れ惚れしながら見るのも楽しみ方の1つです。
原作は、フランシス・メイズの小説【イタリア・トスカーナの休日】ですが、小説が原作の作品は、物語の演じている部分だけではなく、ナレーションで入る言葉もどこか小説めいたところがあり、素敵な雰囲気と表現を楽しむことができます。主人公が作家であるから、というのもあるかもしれません。
kato
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